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第27回 オックスフォードからゲストをお迎えして

Updated: Dec 6, 2022

 初めての緊急事態宣言が出されてから、早いもので2年半である。本学医学部そして病院もウィズ・コロナに変化してきており、ありがたいことに我々スチューデントアンバサダーも、海外からのゲストをお迎えする機会が増えた。直接交流できることは何よりも嬉しいことである。

 去る8月3日、オックスフォード大学産婦人科のStephen Kennedy教授およびManu Vatish教授らが、本学から留学中の阿部雄志先生らと共に、慶應義塾大学病院産婦人科を訪問された。我々は、田中守教授と一緒に、産婦人科外来・病棟・医局・大学構内を案内させていただき、オックスフォードでは慶應ほど超低出生体重児の新生児治療を行わないこと、また、イギリスでは制度として助産師主導のバースセンターが地域ごとに発達していることなど、双方の違いに多くの感想を述べられた。

案内後には特別講演にもご招待いただき、オックスフォード主導のINTERGROWTH-21stプロジェクト、及び子宮内発育不全の新治療法に関する研究報告などを拝聴した。特に後者については、正常ミトコンドリアを母体血液から分離し、胎盤細胞に供給することで子宮内発育不全を治療する、という大変興味深いものであった。今後もこれを機会に一層連携を深めていこう、という嬉しいお話もいただけた。

 さて、今回の案内を担当するにあたり、産婦人科領域への興味も理由の一つであるが、私自身がイギリスと縁が深いことが大きな動機となった。私は慶應義塾幼稚舎時代にオックスフォードにあるドラゴンスクール、慶應義塾高等学校時代には英国最古のボーディングスクールであるウィンチェスターカレッジに留学しており、見知らぬ世界への好奇心で溢れていた10代での経験は、自らの人生を豊かにしてくれた。11歳当時、拙い英語で苦戦する私に、現地のクラスメイトがそっと耳打ちして助けてくれたこと。私がピアノが得意だと知ったホストファミリーが、パーティーでの演奏やヴァイオリンとのアンサンブルの機会を作ってくれたこと。目新しい文化や人の温かさを肌で感じ、私はイギリスが大好きになった。高校で再び戻る機会に恵まれ、今度は異文化を感じるのみならず、オックスフォードやケンブリッジに進学する優秀な仲間たちと、生物学から国際政治、そしてお決まりのシェイクスピアに至るまで、日夜さまざまな議論を交わした。10月にもなればかなり冷え込むイギリスで、街灯も限られた石畳の夜道を歩きながら、同じように医師を目指す友人と、未来を夢見て励まし合った記憶は、今も私を力づけてくれる。縁の不思議さと、人との繋がりのありがたさを実感する。

 人と人が出会い、互いを知り、尊重し、そこに温かさを覚えること、高め合えること。人間は、こういった中に日々の幸せを感じるものと思う。だからこそ、私はこれからも、人との出会いを一つひとつ大切にしていきたい。「広く他人に交はり、その交はりいよいよ広ければ、一身の幸福いよいよ大なるを覚ゆるものにて、すなはちこれ人間交際の起こる由縁なり。」―人間交際(じんかんこうさい)、福澤諭吉先生のお言葉である。今回歓迎したオックスフォード大学のみなさんに、少しでも慶應の良さが伝わり、彼らの心の中に、慶應そして日本の温かさが残っていることを願う。





(四年 平野幹根)

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